不整脈部門は日本の不整脈治療のトップリーダーである山下名誉所長以下 6 名の医師で検査、治療に従事しています。月曜日、水曜日、木曜日、金曜日が頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーション治療日になっており、大塚医師が責任者として従事しています。2022年度は467例のカテーテルアブレーション治療を施行して良好な成績を収めており、特に心房細動疾患の治療実績は増加傾向にあります。火曜日、金曜日の午前がペースメーカー植え込み手術日で八木医師と有田医師、廣田医師が担当しております。また植込み型除細動器および心不全治療のペースメーカー植込み認定施設になっており毎年安定した成績を収めています。
カテーテルアブレーション治療は発作性上室性頻拍症等に対しては 2 泊 3 日、心房細動に対するものは 4 泊 5 日ないし 5 泊 6日、ペースメーカー治療は約 1 週間の入院でクリニカルパスを使用して安全な治療の提供に努めています。外来診療には不整脈部門の全常勤医師が従事しており、患者さんのニーズにお答えするべく日々努力しています。今後もますます安全で高度な治療提供に努める所存です。
心房細動に対するカテーテルアブレーションが開始されてから約20年が経過し、現在では日本のガイドラインでも自覚症状を有する薬剤抵抗性心房細動に対する適応がClass Ⅰとして推奨されるようになりました。当院でも2006 年より心房細動に対するカテーテルアブレーションを開始し現在まで約3,000 例を施行しております。心房細動に対するカテーテルアブレーションは個々の患者さんに応じて適応を決定しておりますので、適応に悩むような患者さんでも外来で相談しながら治療方針を検討します。
当院における心房細動のカテーテルアブレーションの基本的な適応基準としては以下のとおりです。
・自覚症状を有する心房細動例・抗不整脈薬が効きにくい心房細動例(心房細動を根治できる可能性がある治療方法であるため、ご高齢の患者さんや、自覚症状が無くても患者さんのご希望があれば、カテーテルアブレーションを検討しております。)ただし、以下の場合は施術できないことがあります。
・数年以上持続する慢性心房細動例・左房拡大が著明な例(カテーテルアブレーションを施行したとしても洞調律の維持が困難なこともあります。)
・心房内に血栓を有する症例・抗凝固薬が内服不可能な症例(基本的にカテーテルアブレーションは施行できません。)
当院では4 本すべての肺静脈に対する個別拡大隔離術を行っていますが、ほぼ全例において4 本の肺静脈の隔離に成功しています。持続性心房細動症例では左房後壁隔離術を追加することも多くなっています。また術中に肺静脈以外の原因検索を行い、個々の患者さんに応じた治療を行う様に心がけています。慢性期の再発に関しては20~ 30%程度であり、2 回目の治療が必要となる患者さんもいます。合併症に関しては心タンポナーデ・塞栓症(脳梗塞等)などがあります。
~治療前の準備~
予約の都合上、治療まで1 ~ 2 ヶ月お待ちいただくこともありますが、カテーテルアブレーションの適応があれば術前に2 ~ 3週間以上の抗凝固薬投与を行う必要があります。入院に関してはクリニカルパスを使用しており、4〜6日の入院期間で退院可能となります。入院後には心臓CT にて肺静脈および左房の形態を確認します。
~治療当日~
カテーテルアブレーションに要する時間はおよそ2 ~ 3 時間です。通常は静脈麻酔による鎮静を行いながら治療をするため、術中の疼痛等の負担は軽減されています。カテーテルアブレーションの具体的な方法としては、右内頚静脈、右大腿静脈に局所麻酔を行った後、右房内にカテーテルを進めます。心房中隔に卵円孔の開存がなければ、ブロッケンブロー法による心房中隔穿刺を行い左房にカテーテルを進めます。上下の肺静脈にリング上カテーテルを留置し、このカテーテルの情報をもとに肺静脈周囲の焼灼を行っていきます。近年は3D マッピングシステムを利用して透視時間が減少し、効率よく正確にカテーテルアブレーションが 施行可能となってき
ています。最終的に4 本の肺静脈と左房との電気的な交通が途絶えたことを確認して治療は終了となります。治療終了後は止血のためベッド上で6 時間の安静を要します。
~カテーテルアブレーション後の経過~
カテーテルアブレーション後の急性期(翌日から2 ヶ月くらいの間)は、一過性に期外収縮が増加したり、心房細動が再発したりすることがありますが、多くの場合は焼灼後の心房の炎症が原因であり時間とともに改善してきます。当院では術後1 ~ 2 ヶ月程度は抗不整脈薬を投与し、3 ヶ月後に再発の有無をチェックしています。抗凝固薬の投与は術後3 ヶ月間継続し、再発がなければ中止しています。
心房細動に対するカテーテルアブレーションはすべての心房細動症例に対して確立された治療法とは言いがたいのが現状ですが、自覚症状が強い薬剤抵抗性心房細動の患者さんには非常によい適応があります。
目的 | 入院日数 | 疾患 | 内容 |
---|---|---|---|
カテーテルアブレーション(ABL PVI) |
2 泊3 日~ 5 泊6 日 | WPW 症候群 房室結節回帰性頻拍 心房粗動 心房細動 心房頻拍 心室頻拍 | 不整脈の起源を見つけて焼灼することで不整脈を治療します。※(治療の説明は別途専門外来を設けています) |
除細動(DC) | 日帰りもしくは1 泊2 日 | 心房粗動 心房細動 心房頻拍 |
施行前に必要に応じて経食道エコーを実施します。血栓がある場合には血栓溶 解治療を行ったうえで実施します。 |
ペースメーカー植え込み術(PMI) | 7 日~ 10 日 | 徐脈 重症不整脈 心不全 |
終了後1 時間の安静が必要です がその後は歩行可能です。 |
ペースメーカー電池交換 | 2 泊3 日 |
当院では、クリニカルパスを導入しています(日本クリニカルパス学会法人会員)。 クリニカルパス(clinical path)とは『疾患別の入院治療計画』のことで、予め入院計画表を患者さんに渡し、入院から退院までの経過がわかるようになっています。
当院のクリニカルパス委員会は、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・臨床検査技師・医事課のメンバーで構成され、患者さんへのサービス向上・チーム医療の促進・安全な医療提供が行えるように努めています。現在使用しているクリニカルパスは以下のものです。
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