「心臓に負担をかけないように動かない方がいい」
心臓病に罹患した方々は、少し動くだけで息切れがしたり呼吸が乱れたりします。そのため「動くと症状が重くなる」と考える方が多くいらっしゃいます。
とはいえ、運動をせずに安静にしているともっと体力が落ちてしまうのでは…と心配になりますよね。
ずっと安静にしていると身体にどんな影響があるのでしょうか?
また、心臓病の方はどの程度の運動をするべきなのでしょうか?
今回は、心臓病の方に向けた運動不足解消方法をご紹介します!
安静にしていると起こる「デコンディショニング」という症状
長期間安静にし、動かない状態が続くと、デコンディショニングと呼ばれる症状が出ます。これは、身体を動かさないことによって起こる異変の総称を指します。
筋肉の萎縮や筋力・肺活量の低下、立ちくらみやふらつきなどが代表的な症状です。
運動能力が低下することによって自分自身で身体の調節ができなくなり、このような体調の変化が起こります。
「心臓病の方は心臓に負担がかからないように安静が一番」
そう言われてきましたが、全く動かずに過ごしていると、筋肉をはじめとした心臓以外の部分に負担がかかってしまいます。
適度に身体を動かす「心臓リハビリ」の効果は?
心臓リハビリテーションとは
心臓リハビリテーションとは、心臓病の方が運動療法やカウンセリングを通して体力の回復・社会復帰・再発予防を経てQOLの高い生活を送るためのリハビリテーションのことを指します。
デコンディショニングが進むと日々の生活すらも難しくなり、精神的な不安から自律神経にも影響を及ぼします。
心臓リハビリは、運動療法を通して心の健康にも繋がります。
実際に外来による心臓リハビリと生活指導・在宅運動・カウンセリングを受けた心臓病患者は、受けていない心臓病患者と比べて、歩行距離が長く、再入院率が低い傾向にあります。
心臓リハビリの効果
- 運動能力が向上し息切れなどが軽くなることで楽に身体を動かせるようになる
- 精神的な不安やうつ状態が改善し、気分が軽くなる
- 運動することで動脈硬化の原因となる糖尿病や高血圧などが改善する
- 自律神経の働きがよくなり、血中のBNP値が安定する
- 症状悪化による再入院や死亡の可能性が減る
これらの効果は「心臓リハビリを受けているから」起きる効果ではありません。
心臓リハビリを通して再入院予防・症状悪化を防ぐ方法を学び、生活習慣を整えながら運動を続けていくことで得られる効果です。
学びを通してご自身の体調と効果的なリハビリ方法を知ることが何より重要です。
オーバーワークに注意!自分に合った運動量で
過度な運動や負荷の大きい運動は症状が悪化する可能性があるため、無理は禁物です。
だからといって、「運動は控えましょう」と考えないでくださいね。
実際に、最近の研究結果でも「心不全における息切れは筋肉量の低下が一つの原因」と出ており、適切な運動療法を続けると心臓病の症状が軽くなることが判明しています。
心臓病の症状は人それぞれです。
「運動した方がいいと聞いた」と、担当医に相談もなく自己流で運動をはじめることは危険です。
担当医と相談しながら、自分に合ったペースと負荷で運動を始めましょう。