「心臓病患者だが、日常生活を問題なく送れるように体力をつけておきたい」
「心臓の負担にならない範囲で運動がしたい」
そのような方々のために、「心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)」があります。
本記事では、心臓リハビリと、その中核となる「運動療法」について紹介します。
心臓リハビリとは?
心臓リハビリは、心臓病にかかって闘病生活を余儀なくされた方が、日常生活および社会生活を可能な限り健康時と同様に送れるようにするための治療です。
この心臓リハビリの中核となるものが「運動療法」です。
なお、心臓リハビリには、食事・服薬などの生活のサポートや心臓病についての相談(カウンセリング)も含まれます。
運動療法とは?
心肺運動負荷検査(CPX)の結果に基づき、心臓および全身に無理な負担をかけることなく、運動による効果を最大限に得るための運動強度を設定します。
この適切な運動強度(運動処方)に沿って行う運動が運動療法です。
どんな人が対象者になるの?
以下に当てはまる方で、症状が安定している患者さんは運動療法の適用となります。
- 安定狭心症
- 急性心筋梗塞後
- 心臓手術後
- 慢性心不全
- 末梢動脈閉塞性疾患
- 大血管疾患(大血管術後等)
実施内容
(1)入院患者さんの場合
全身状態が良好で、廊下歩行(200m)が問題なくできるようになった時点で心肺運動負荷検査をはじめとする種々の検査を受けていただき、その結果で運動処方を作成します。
その後、運動処方に沿って運動療法を受けていただきます。
運動療法は通常は1日1回約1時間弱行います。
急性期には運動中の心拍数の変化、不整脈の発生をチェックするために原則として心電図モニターを行います。常時スタッフが待機し、血圧などの測定を適宜行います。
入院中の患者さんは、退院時までに身のまわりのことが楽にこなせる程度の運動能力を獲得していただくことを目標とします。
(2)外来患者さんの場合
先ほど挙げた症状の対象となる方は、運動療法の適用となります。
他院で治療を受けられていても主治医の了解があれば、当院で運動療法をお受けいただけます。
なお、原則として運動療法開始後5ヶ月間は健康保険が適用されます。
メリットは?
運動療法を継続することで、運動能力の改善、維持、重篤な心事故(急性心筋梗塞、危険性の高い不整脈など)の予防と、生命予後の改善に有用であることが知られています。
具体的に心臓に関しては、心臓の筋肉を養う血管の血流がよくなり、以下の効果を得ることができます。
- 心臓の機能の改善
- 不整脈の発作抑制
- 虚血発作の減少
- 肺機能の改善
- 筋肉量の改善
- 動脈硬化の原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症などにも有効
外出自粛で運動不足な方へ
前述のように、適切に運動を行うことは心臓病を含む多くの疾患の発症や重症化防止に有効ですが、ここ数年の新型コロナウイルスによる外出自粛によって、運動不足になっている方も多いと思います。
なまったカラダをしっかりほぐしてコロナ疲れを撃退しましょう!
心臓血管研究所では、自宅でも、デスクワークのときでも、さまざまな年代の方に気軽にご利用いただける体操を作成しました。
”心臓守る君”体操
”心臓守る君”体操は、心臓血管研究所が心臓リハビリの経験・ノウハウを活かして作成した体操です。
動画はこちら
https://www.cvi.or.jp/shinzou-rihabiri_media/index.html
この体操は、「立って!」と「座って!」の2種類があり、それぞれ3分余りで自宅や職場などでの空いた時間を使って実施できます。
いずれの体操も、特に「日頃使っていない筋肉を動かす」体操を組み入れて、効率的・効果的に血液循環を良くすることを工夫しており、心肺機能の改善とともに脳への刺激や心理的な解放感も得ることができるようになっています。
ただし、急性期の心筋梗塞の患者さんや中程度以上の心不全の方、コントロールされていない心臓病の患者さん、危険な不整脈が出現するといった患者さんは、まず専門医と最適な運動について相談をするようお願いします。
運動してよいか不安な方は医療機関へご相談ください
本記事では、心臓リハビリにおける運動療法について紹介しました。
運動療法には多くのメリットがありますが、心臓病の患者さんは自分がどれくらいの運動をしてもよいか分からない方も多いと思いますので、まずは医療機関へご相談ください。