今回は、加齢と心不全の関係性について解説を行います。
最初に結論から申し上げると、加齢に伴って心不全を発症する確率は高まります。しかし、加齢によって、心臓を含む様々な臓器や血管など、身体のあらゆる器官が徐々に衰えていくのは「老化」として自然な流れです。歳を重ねるごとに視力が低下したり、走る速度が落ちたりするのと同じです。
「加齢に伴い、心不全の罹患率が増加するのは自然な流れ」ということを念頭におきつつ、続きをお読みいただけると幸いです。
心不全の患者が急増する理由
まずは、近年の心不全患者数の推移について見ていきましょう。
昨今、私たち日本人の生活習慣は、昔に比べ欧米化しています。
特に食事は欧米化が顕著に現れている習慣の1つです。
そうした生活習慣の変化に伴って、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患を患う方は増えてきました。また、高齢化に伴う高血圧や弁膜症の増加などにより、日本全体で心不全の患者が増え続けているという現状があります。
加齢と心不全の関係性
冒頭でも述べていますが、心不全の罹患率は年齢が上がるにつれて上昇するのが自然な流れです。
アメリカの研究によれば、50歳代の慢性心不全の発症率は1%程度であるのに対し、80歳以上では10%になるとの結果が出ているようです。
日本は、40年以上高齢化の一途をたどっており、今では「超高齢社会」と言われるようになりました。高齢者の増加に伴い、我が国では今後も、心不全の患者数は増加していくものと予想されています。
高齢者が心不全の発症を予防するには?
加齢に伴い、心不全の発症率があがってしまうのは、仕方のないこと。予防をしているからと言って防げるものでもありません。
しかし、高齢者に限らず、バランスの良い食事・ご自身の身体機能に応じた適度な運動・喫煙や過度な飲酒を控えるなど、いわゆる「身体に良い生活習慣」を意識的に実践する心がけは、非常に大切です。
不安な場合は医療機関の受診を【急いで受診すべき症状とは?】
年齢が上がるにつれて、心臓の機能が低下していくのは、自然なこととはいえ、すでに何かしらの気になる症状が出現しているのであれば、医療機関への受診を検討してもよいかもしれません。
以下の症状が気になる場合は、心臓の機能が低下している可能性があります。
- 息苦しさを感じる
- 急激な体重増加が見られる
- 浮腫みが気になる
- 倦怠感がある
- 胸のあたりに圧迫感や苦しさを感じる
- 食欲不振が続く
- めまいがする
- 失神したことがある
1つでも気になる症状がある場合は、かかりつけ医や循環器内科の医師に相談することをお勧めします。
特に、息苦しさを感じ、1週間で2kg以上の体重増加が見られた場合やそれに伴って顔や足の浮腫みが出現した場合は心不全が急激に悪化している可能性も考えられるため、早めの受診がお勧めです。
さらに次のような症状がある場合は、緊急受診すべき状態ですので、救急車の手配を含め、早急に医療機関への受診を検討しましょう。
- 横になっても息苦しさが改善されない
- 横になっていられず、冷や汗をかく
- 脈が速くなる
- 意識が遠のく
このような症状が見られる場合、心筋梗塞など急を要する状態であることが考えられます。ためらわず、救急車を呼びましょう。
救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合は#7119にて救急車を呼ぶべきか否かを聞くことも可能です。
状況に応じて使い分けることをお勧めします。
まとめ
今回は、加齢と心不全の関係性や医療機関を受診すべき症状について併せて解説しました。
心不全は、高齢になるにつれて罹患率が増えていくものです。そのため、目立った症状がなければ、特別視する人は少ないかもしれません。
しかし、息苦しさやめまい、浮腫みを伴う急な体重増加など、本記事で紹介したような症状がある場合には、心不全の可能性が考えられるため、かかりつけ医や循環器内科への受診をお勧めします。
いずれにせよ、こうした身体の変化にいち早く気付くためには、日頃から身体の状態や様子をしっかりと観察しておくことが非常に大切です。
ご自身あるいは、ご家族の日々の観察が些細な変化への気付きにつながり、早期発見・早期治療に役立つのです。
なにか不安なこと、心配な変化が見られた場合には、医療機関への受診や相談を早めに行いましょう。
当院には専門外来
「息切れ外来」「心不全予防外来」があります。
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