高齢な家族の健康が気になる方へ
高齢のご家族の健康に不安がある方はいませんか?
まずは、ご家族の方に次の質問をしてみましょう。
以下に挙げる項目に、当てはまるものはありますか?
- 普段の活動で息切れすることがある
- 夜間、咳や痰が増えてきた
- 足にむくみがある
- 体重が急激に増えた
- お腹の調子が悪い、またはお腹が張る感じがある
- 食欲がなく、食べる量が減った
- 血圧や脈拍が不安定である
- すぐに疲れる・体のだるさが残る
- 横になって眠れない(座ると楽になる)
これらは「心不全」の症状です。
2項目以上当てはまった方は、心不全の可能性があります。
高齢者が特になりやすい「心不全」
心不全とは、病気の名前ではなく、心筋梗塞・心筋症・高血圧・弁膜症・不整脈・先天性疾患など、様々な疾患が原因となって起こる、心臓のポンプ機能が低下した状態のことをいいます。
この心不全ですが、特に高齢者がなりやすいと言われています。とくに65歳を過ぎると要注意です。
その理由として、歳をとることにより心臓の筋肉(心筋)が硬くなることが挙げられます。心筋に弾力性が無くなると、血液が流れにくくなるため、途中で滞って心不全の状態になることがあるためです。
また、高齢者の心不全では、自覚症状に気づかないことも多く、上に挙げた症状があっても「年のせいだから仕方ない」と見過ごしてしまいがちです。
心不全はステージごとに死亡リスクが上がる
心不全を発症した場合、適切な治療をすることで一旦症状は良くなりますが、心不全そのものが完全に治ることはなく、だんだんと進行します。
心不全の重症度は、がんと同様に段階的に分類した評価があります。
症状によって4つのステージに分類され、ステージごとに死亡リスクが上がります。
ステージA:心不全の危険因子あり
高血圧、糖尿病、動脈硬化など、心不全につながる危険因子を抱えている段階です。
ただし、この段階ではまだ心臓の働きに異常は見られず、心不全の症状も現れていません。
心疾患にならないよう、生活習慣の見直し・改善が必要となります。
ステージB:心臓の働きに異常が現れる
心肥大、心拡大、心拍出量低下、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈など、心不全の直接の原因になる病気を発症している段階です。
この段階では、心臓の働きに異常がありますが、心不全の症状は現れていません。
心不全の発症を予防するために、心疾患の治療を行うことが大切です。
ステージC:心不全の症状が現れる
先述した、息切れやむくみといった心不全の症状が現れる段階です。
「心不全」と診断された人はすでにステージCということになります。
再入院を繰り返さないことと突然死を防ぐことが目標となるため、 心不全の治療を行い、症状をコントロールする必要があります。
ステージD:治療が難しくなる
治療を行っても治りにくい末期の段階です。
緩和ケアや終末期ケアを行います。
緩和ケア
身体的・精神苦痛を除去し、生活の質(QOL)
終末期ケア
治療による延命よりも、病気の症状などによる苦痛や不快感を緩和し、精神的な平穏や残された生活の充実を優先させる処置を行う。
ステージの判定は、実際に専門の医療機関で受診し、検査してみないと分かりません。
高齢者で気になる方はためらわず医療機関を受診しましょう。
心不全は早期発見が大切!
心不全は、予防はもちろんですが、発症しても早期発見することが大切です。
すぐに治療を開始し、心不全の進行をできるだけ抑える必要があります。
ここでは、早期発見のためのポイントを紹介します。
自覚症状に気づけるようにしましょう
まず、心不全の自覚症状を知り、気づけるようにしましょう。
息切れ、むくみが代表的な症状ですが、その他に体重増加、食欲不振、腹部膨満感、疲れやすい、低血圧なども心不全の症状として現れます。
息切れ
心不全の初期には、階段や坂道を上ったりしたときに息切れが激しくなります。
これがさらに悪化した状態だと、平地を歩いているだけでも、最後には安静時にも息切れを起こすようになります。
むくみ
すね、足の甲、くるぶしの周囲などを指で押した後、くぼんでしばらく元に戻らないようなむくみがあれば心不全のサインです。
また、むくみとともに体重が数キロ増加することがあります。
検査を受けましょう
自覚症状がなくても、ご家族が高齢で不安がある場合は一通りの検査を受けることをお勧めします。
心不全かどうかを診断するためには、本人の問診に加えて様々な検査を行い、総合的に判断します。
検査には、聴診、胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液検査などがあります。
聴診
聴診器で心臓の音を聴く検査で、雑音や正常には聴こえない音がないかを確認します。
心雑音がある場合は、弁膜症などの病気が疑われます。
胸部X線検査
心臓の形や大きさ、肺に水が溜まっていないか、肺の血液のうっ滞がないかを確認します。
正常な場合、心臓は肺の半分以下の大きさとなりますが、それより大きいと心拡大となり、心不全が疑われます。
心電図検査
心臓の動きを電気的に測定した波形から、心不全の原因となる心筋梗塞や不整脈などの病気を発見できます。
心エコー検査
超音波を当てて心臓の形、大きさ、弁の状態を調べます。心筋梗塞や心肥大、弁膜症などが分かります。
血液検査
採血を行い、心臓に負担がかかると心筋から分泌されるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンの量を測定します。
BNPの値が高いほど心臓に負担がかかっている状況といえるため、心不全を診断する上の指標になっています。
65歳を過ぎたら、かかりつけの先生に年に一度はこのBNPの値を調べてもらいましょう。
心配ごとがあればすぐに受診しましょう
心不全の早期発見のためには「自覚症状を知って気づくこと」「検査を受けること」が大切ですが、高齢者が自ら行動できるケースは少ないかもしれません。
専門医に診てもらってはっきりした方が不安も払拭されます。
自身またはご家族の身体が心配な方は医療機関を積極的に受診しましょう。
当院には専門外来
「息切れ外来」「心不全予防外来」があります。
お気軽にご相談ください。