先日、CCT Surgicalという学会からの依頼を受けて、ライブ手術を行いました。今回は「上行全弓部置換術」と「冠動脈バイパス術(2枝)」の手術を実施しました。当院の手術室から神戸の学会場に手術の様子を中継し、学会に参加されている外科医の皆さんが手術を見ながらディスカッションを行うという形式です。
ドラマ『ブラックペアン2』では(フィクションの)公開手術が描かれていましたが、実際のライブ手術は少し異なりまして、ステージ上で直接見られながら手術をするわけではありません。何より患者さんに不利益がないよう、安全面に最大限の配慮をしなければなりません。そのため、さまざまな規約があり、その規約を踏まえた準備が必要です。さらに、手術中も手術の妨げとならないよう厳しい規制が設けられています。私の声は会場に届きますが、手術を行う私たちには会場の音声は直接届かず、手術中の質問や意見は、手術室コーディネーター(会場とのやり取りを担当し、手術には直接参加しない外科医)を介して伝えられます。
今回の手術では、イムス葛飾ハートセンターの金村賦之先生にコーディネーターをお願いし、さらにコメンテーターとして須磨久善先生にご協力いただきました。予定していた術式は、予定通りの時間(3時間30分を予定していましたが、実際には3時間33分で終了)で無事に完了しました。須磨先生はその半生がドラマ化されるほどの「レジェンド」であり、私の憧れの外科医の一人です。もちろん、手術後の経過も良好で、患者さんは無事に退院されましたが、お二人の先生に手術を見ていただいたこと、手術終了後にいただいた言葉や、メールでの激励は、私にとってかけがえのない宝物となりました。
また、手術の準備や普段とは異なる緊張感の中で行うライブ手術の経験は、私たち心研外科チームにとって他では得られない貴重なものであり、今後の飛躍に繋がる大きなきっかけとなったと確信しています。
ちなみに、「上行弓部置換術」単独でも、私が医師になったばかりの頃は10時間を超える手術が珍しくありませんでしたが、現在では3時間を切る時間で安全に実施できるようになっています。今後もライブ手術の依頼をいただけるような外科医、そして施設であり続けるために、さらに精進し、常に情報発信を続けていきたいと考えています。
最後に、手術の準備に尽力してくれたすべてのスタッフ、そして土曜日にもかかわらずご協力いただいた患者さんに、心より感謝申し上げます。