コレステロール

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Qコレステロールは、体の中でどんな働きをするのでしょうか

 コレステロールは、体のなかに存在する脂肪の一種です。
 体は沢山の細胞からできていますが、これらの細胞の膜にコレステロールが含まれています。
 また、副腎から分泌される副腎皮質ホルモンや男性ホルモン、女性ホルモンの原料としてもコレステロールはつかわれます。また、食べ物の消化吸収に必要な胆汁酸は、肝臓でコレステロールを原料につくられています。

Qコレステロールの値が高いと、なぜいけないのですか?

 動脈硬化とコレステロールが、深く関わっているからです。ここでは、動脈硬化という言葉をおかゆ状硬化、という意味で使いますが、これは心臓から直接出ている大動脈、心臓に栄養を送っている冠動脈、脳に向かう動脈など太くて大事な動脈に、おかゆのようなカスがたまり、固く、弾力を失うと同時に狭くなって、血液の流れが悪くなり、ひどいときには完全に血流がなくなってしまう状態です。
コレステロール
 これは正常な冠動脈の断面です。階調のためにわかりにくいかもしれませんが、内膜・中膜・外膜ときれいな3層構造を示しています。それに対して、動脈硬化が起こると下の写真のようになります。
コレステロール
 内腔(血液の通り道)は極端に狭くなり、血管壁には分厚くコレステロールなどのかすが貯まって肥厚しています。この動脈硬化の進展のメカニズムは完全に解明されているわけではありませんが、多くの研究者に広く受け入れられている学説は”障害反応説”というもので、血管に傷ができ、それを治そうとする反応が起こり、その繰り返しによって動脈硬化になる、というものです。この過程で、余分なコレステロールが血管の壁に蓄積されていくことになります。

Q冠動脈硬化が進むと、どんな症状がでるのですか?

 典型的には労作狭心症というかたちになります。つまり、急いで階段を駆け登ったりすると、胸のまんなかが締め付けられたり、押さえられるような感じがしたりするようになるのです。ひとによってはあごがだるくなる、左肩が重くなるという方もあります。この症状はすこし休むと治まるのが特徴です。そのため、あまり重大なことと気づかずに、心筋梗塞になってしまうまで放っておかれ、現場で診ているわたしたちも残念な思いをすることがしばしばです。
 心筋梗塞が狭心症と違っているのは、まず症状としては、痛みが休んでも治まらないことで、痛みの程度も狭心症よりひどいことが多いものです。そして、心筋梗塞になると心臓の筋肉の一部が壊死、つまり筋肉の細胞が死んでしまいます。心臓の筋肉細胞は再生しませんから、治っても完全に元通り、というわけにはいきません。だから、心筋梗塞が起こってしまう前に対処することが大事なのですが、困ったことに、狭心症の痛みを感じない、それどころか心筋梗塞になっても自覚症状の全くないかたが大勢います。

Q動脈硬化にも良い、悪いがある?

 実は動脈硬化にも良し悪しがあります。「良い」動脈硬化というのは、組織として強固な安定したもので、「悪い」動脈硬化というのは組織として脆くて弱く、ちょっとした刺激で動脈硬化部分が破けてしまうものをさします。

 図に示すように、安定した動脈硬化は厚い繊維被膜で覆われており、簡単に破けることはありません。一方で不安定な「悪い」動脈硬化では悪玉コレステロールの核が大きく、被膜がほとんどないため、ちょっとした刺激でこのコレステロール核部分が破けてしまいます。そして血管内に飛び出るのを防ぐため「かさぶた」(血栓)ができ、血管内を埋め尽くすことにより血流を遮断してしまいます。つまり、「悪い」動脈硬化が冠動脈にできると心筋梗塞になりやすい、ということなのです。一部の脳梗塞も同じ機序で発症します。

Q「悪い」動脈硬化にならないようにするには?

 実は動脈硬化は加齢に伴い、どなたにでも起こりえます。しかし、「悪い」動脈硬化にならなければ心筋梗塞や脳梗塞のリスクをずっと減らすことができます。こういう因子を持っていると「悪い」動脈硬化になりやすい、というものがある程度わかっていますから、それらを持っている人は注意をする、と同時にその因子がひとつでも減るように努力、治療をすることが大切です。それらを冠危険因子と呼びますが、その代表が悪玉コレステロールです。
 その他の冠危険因子としては年をとること、性別、つまり男性のほうが動脈硬化になりやすいのですが、女性が動脈硬化に強いのは更年期までで、その後は男性に追いついてしまいます。その他高血圧、糖尿病、肥満、タバコ、身内に狭心症や心筋梗塞のかたが大勢いること、仕事に追われることを好むモーレツ型の性格、などが冠危険因子です。
 最近は採血検査のときにHDLコレステロールというものも同時に測定することが多くなりましたが、このHDLはからだの各部分から余分なコレステロールを引き抜いて肝臓に送り返す役割をもっています。いわゆる”善玉コレステロール”ですが、このHDLが少ないことも冠危険因子のひとつに数えられます。
 大事なことは年齢や性別以外の危険因子はみな、努力によって改善することができるということです。
 ここではコレステロールに話題をしぼってお話しますが、危険因子がたくさんあればあるほど動脈硬化は進みやすいのですから、コレステロールさえ下げればよい、とは考えないでください。

Qコレステロールの値は、どれくらいならよいのでしょうか?-1

 コレステロールが高くなればなるほど心筋梗塞で亡くなる人が増えることは多くの調査で証明されていました。そして、最近10年くらいの間に、とくに心臓病による死亡率の高い欧米で、そのコレステロールを治療によって低下させるとどうなるか、という研究が数多くの人を対象にして、いくつも行われました。
 それらの研究の一致した結論は、コレステロールを下げると動脈硬化の進行を遅らせることができ、また心筋梗塞の発症も減らせる、というものです。たとえ動脈硬化があってもコレステロールを下げると、その動脈硬化をおこした部分からコレステロールが引き抜かれるために、そこがグズグズの状態から安定した線維成分に置き換わり、血管が完全に詰まって心筋梗塞になってしまうことを防げるのではないか、とも言われています。
 下の図は、心筋梗塞・不安定狭心症などのいわゆる“急性冠症候群”(acute coronary syndrome)の発症機転の模式図です。脂質に富んだプラーク(動脈硬化巣)は破綻しやすく、狭心症や心筋梗塞など、イベントを起こしやすいのに対し、ここから脂質を引き抜くとプラークが安定化するのではないかと考えられています。
こ冠動脈の模式図
 これは冠動脈の模式図です。

Qコレステロールの値は、どれくらいならよいのでしょうか?-2

 普通、コレステロールの値は血液の液体部分1デシリットルあたり何ミリグラム含まれるか、というように表されます。230といえば、血液1デシリットルのなかにコレステロール230ミリグラム、という具合です。
 アメリカと日本の基準はすこし違いますが、日本では基準値を220に置いています。220から240位が境界値になります。治療の目標値は200です。
 コレステロールの高い人が全員心筋梗塞になるわけではありませんし、コレステロールが低くても心筋梗塞になる人もあります。これはタバコと肺ガン、血圧と脳卒中の関係と同じです。
 しかし、危険は少ないにこしたことはありません。とくに危険因子をたくさん持っている人や、すでに心臓に問題をかかえている人の場合は治療すべきでしょう。

Qどうすれば、コレステロールの値を下げられるでしょうか?

 コレステロールの高い人のなかには、甲状腺の働きが悪い人、腎臓からタンパクが多量に出ている人や肝臓の悪い人がいます。こうした人々は、その原因になっている病気の治療をすることが先決です。
 糖尿病のために代謝全体の調子がおかしくなり、コレステロールも中性脂肪も高くなっているかたも多いのですが、この場合も糖尿病のコントロールをきちんとすればコレステロールは下がります。
 最近は成人病という言葉に代わって生活習慣病、という言葉が使われるようになっていますが、コレステロールの値も深く生活習慣と関わっていることが多いのです。バターや卵、肉類などコレステロールをたくさん含む食品やカロリーの摂りすぎ、運動不足、ストレス、タバコなどが皆コレステロールを上げる方向に働きます。
 ですから逆にこれらを制限していれば、コレステロールを下げることができるという訳です。

Q赤ワインと動脈硬化について

 赤ワインが動脈硬化を防ぐ、ということが最近医学の専門誌でも話題になりました。最近ではブームのようになっています。
 昔からイギリスや北欧などに比べてフランスやイタリアなどでは心筋梗塞で亡くなる人が少ないことが知られていましたが、これは赤ワインに含まれる抗酸化物質(ポリフェノール)のせいだ、というのです。コレステロールは酸化されると血管に蓄積しやすいので、これを防ぐことができれば動脈硬化になりにくい、だからワインの消費量の多い南ヨーロッパでは動脈硬化が少ない、という訳です。
 しかし、赤ワインがなくとも、カロリーや油が少なく、食物繊維をたくさん含む伝統的な日本食はコレステロールを下げるのには最適です。また、緑茶にもポリフェノールはたくさん含まれています。実際、ワインの消費量の多いフランスよりも、日本のほうが、更に心臓病で亡くなる人は少ないのです。

Qコレステロールを下げる薬について教えてください。

 もちろん薬を使う場合も食事療法は基本ですから、めちゃくちゃな食事で薬を飲んでいればよい、というものではありません。
 最近はコレステロールを下げる作用が大変強く、副作用も少ない薬がたくさん開発されたので、従来よりもコレステロールを下げることは容易になりました。
 食事療法だけでうまくコレステロールが下がらない場合はそういう薬を使うことになりますが、長い間飲み続けるものですから、ときどき副作用がないことをチェックする必要があるのは高血圧のときの降圧剤と同じです。
 コレステロール低下のために用いられる代表的な薬の一覧表を示します。

一般名 商品名 用量 副作用
1・スタチン系
pravastatin メバロチン 10-20mg 胃腸障害、肝臓障害、CPK上昇、ミオパチー
simvastatin リポバス 2.5-5mg
fluvastatin ローコール 20-60mg
atorvastatin リピトール 10-20mg
pitavastatin リバロ 1-4mg
rosuvastatin クレストール 2.5-10mg
2. 陰イオン交換樹脂
cholestylamine クエストラン 8-12g 便秘、悪心、肝臓障害、CPK上昇、脂溶性ビタミン・葉酸吸収障害
3.probucol
  ロレルコ
シンレスタール
500-1000mg 胃腸障害、肝臓障害、CPK上昇、QT延長
4. フィブレート系
clofibrate アモトリール 750-1500mg 胃腸障害、肝臓障害、性欲低下、CPK上昇、ミオパチー
sinfibrate コレソルビン 750-1500mg
alminium アルフィブレート 1500mg
clofibrate    
clinofibrate リポクリン 600mg
bezafibrate ベザトール 400-600mg
5. ニコチン酸系
niacin ナイアシン 2-3g かゆみ、熱感、紅潮、口渇、耐糖能低下、胃腸障害、尿酸値上昇
nicomol コレキサミン 600-1200mg
niceritrol ペリシット 750-1500mg
alpha-tocopherol nicotinate ユベラN 300-600mg
6. その他
Ezetimibe ゼチーア 10mg 搔痒、発疹、肝機能障害など
イコサペント酸エチル(EPA)製剤 エパデール 1800mg
EPA・DHA製剤 ロトリガ 2g

 これらの薬を、コレステロールだけが高い方、中性脂肪だけが高い方、両方とも高い方それぞれに合わせて使い分けます。1種類では効果が不十分な場合には組み合わせることもあります。ときどき下げても意味がないので、継続的に使用するのが原則です。

Q血縁に、コレステロールの高い人がたくさんいるのですが。

 食事療法が基本であることはすでにお話しましたが、“家族性高コレステロール血症”といって、食事をコントロールするだけではどうしてもコレステロールを良い値まで下げられない、しかも、高率に心筋梗塞を起こす遺伝性の病気があります。これは200人に一人位の割合で発生しますから、決して少ない病気ではありません。
 ご家族みな、コレステロールが高く、心筋梗塞の方もいる、というような場合には早めに病院で診察を受ける必要があります。